秋のバラを見に、群馬県の「中之条ガーデンズ」へ。バラのアーチをくぐり、吸い込まれるように小道を歩くと、まるで童話のワンシーンに迷い込んだようでした。旅の途中でちょっとしたハプニングもありましたが、今では良い思い出です。今回はそんな記憶に残った一日を綴ります。

中之条ガーデンズとは?
群馬県吾妻郡中之条町に位置する「中之条ガーデンズ」(別名:中之条 花楽の里)。広々とした敷地の中で、約400種類のバラと四季ごとに変わる草花や樹木が育ち、訪れる人をナチュラルガーデンの世界へ誘います。
庭園の雰囲気は、“整えられすぎていない自然美” を感じさせ、ガーデニング好きにはじっくり見て回りたくなる場所がたくさんあります。季節の移ろいを肌で感じながら、ゆったりと散歩を楽しんでみませんか。
中之条ガーデンズをおすすめしたい人
▪️バラや宿根草を栽培している人
▪️ガーデンと山々の風景を眺めながらゆったりしたい人
▪️プロのガーデナーが手入れをしたガーデンで学びたい人
中之条ガーデンズの設計・植栽には、バラ育種家の河合 伸志さんやガーデンデザイナーの吉谷 桂子さんが関わっており、その洗練された美意識が随所に表現されています。

童話の世界へ|花の小道とバラのアーチ
バラのアーチをくぐると、まるで物語の扉を開けたかのような風景が広がっています。小道の足元には、銅葉のカラーリーフが散りばめられ、周囲の緑をぐっと際立たせています。見上げれば、目線の高さで出会うバラに思わず足を止めました。

中之条ガーデンズのローズガーデンは、河合 伸志さん が植栽を手がけたエリアがあります。バラを主役にした「庭」ではなく、バラと下草や草花、構造物が調和して、ひとつの“風景”として楽しめるように設計されているのが特徴です。
また、園全体の構成は、吉谷 博光さんのデザインに基づき、意図的に景観をひと目で見せすぎない構成にしてあるそうで、歩く人の期待感や発見を大事にしているそうです。

訪れる季節や時間帯によって、植物たちは表情を変えます。私が訪れた朝一番ではバラの花びらが朝日があたりキラキラしていました。見通しの効かない小さなカーブを描いた道は、「行き先に何があるんだろう」と期待しながら歩く楽しさも感じます。バラと共に植えられていた草花や、葉色でアクセントを添えるカラーリーフも効果的に使われていて、バラの華やかさを引き立てる役割を果たしている印象が残りました。

ナチュラルガーデンで学んだこと
中之条ガーデンズの中には、構造や装飾よりも「植物本来の美しさを引き出す庭」が随所にあります。とりわけナチュラルスティックガーデンでは、草花の自然な配置、色の重なり、暮らしに近い植栽の仕方が意識されていて、「庭=作品」というよりも「庭=生き物たちの居場所」だと感じさせられました。

私が訪れた日は、ナチュラルスティックガーデンを管理するヘッドガーデナーさんによるガーデンウォークが開催されていて、運良く参加することができました。
ガーデナーの方が実際に歩きながら、植栽の意図や植物の組み合わせについて丁寧に語ってくださり、庭に込められた思想や季節ごとの変化への配慮を、直に学ぶ貴重な機会でした。
訪れた10月中旬は、宿根草たちが夏の盛りを越えて秋というフィナーレへ向かってゆく時季。
移ろいゆく庭の姿を、静かに受け止めるような時間が流れていました。

深まりゆく秋色の中で、背の高いグラス類の植物が陽に透け、個性が一層際立って見えたのが印象的。ナチュラルガーデンやスパイラルガーデンの植栽を担当している園芸家の 吉谷 桂子さん のセンスがよく表れていて、質感や配色で魅せる庭づくりでは、透明感のある花びら、小さな葉群、茎の間を抜ける光……すべてが“景色”の一部として計算されているように感じられます。
特に印象的だったのは、背丈の違う草花を重ねる構成と、控えめな色調の中で引き立つアクセントカラーが絶妙だったこと。たとえば、控えめなグリーンの中に、ちょっと渋めのブラウンや紫の葉がくっきり映える。足元に散りばめられた銅葉のカラーリーフもその意図の一部です。
そして、花と緑の “呼吸”を感じる間隔──植物同士をぎゅっと詰め込みすぎず、適度に空間を残しているからこそ、風が心地よく抜け、見ていて落ち着く空間になっていると気付きました。
自宅ガーデンに取り入れるヒントになる部分が多く、すぐに試してみたくなるデザインのアイデアをもらえました。

「赤い小屋」の中では、球根が販売されており、 3メートルになるアリウム をチョイス。来年花開く瞬間を思い描いたら、どうしても手に取りたくなったのです。 来年の春、空に向かって咲く花が風に揺れる姿は、庭のアクセントになってくれるでしょう。
花茎が伸び、花が咲き、他の草花たちと調和して庭を彩る姿を想像するだけで、今からワクワクします。

旅のハプニングと不思議な出来事
実は中之条ガーデンズに向かう途中、高速道路を走行中に車の警告ランプが突然点灯したのです。音も振動も何もなく、ランプだけが静かに赤く灯りました。
最初は「え、なんだろう…」と思いながらも、高速道路上で急な対応はできません。近隣のディーラーに電話してみると、どこも予約がいっぱいとの返答。不安を抱えながらも、ガーデンだけを楽しんで、昼過ぎには帰路につくことにしました。
そして、途中でサービスエリアに立ち寄り、軽く休憩して再び高速に戻った直後、なんと警告ランプがスッと消えたのです。思わず「えっ?」と声をあげてしまいました。音もしない、振動もしない。ただ、ランプが静かに消えて、車は元通り。
その後、高速を走りながら「精霊か誰かが庭を守ろうとしてくれてるのかな?」なんて考えがちらりと頭をよぎりました。不安がどこか清々しい気持ちに変わった瞬間でした。

中之条ガーデンズは“また行きたい場所”
初めて訪れた中之条ガーデンズでしたが、帰り道には「次はいつ来ようかな」と自然に考えている自分がいました。
季節が変われば、庭の雰囲気もがらりと変わります。春には球根たちが芽吹き、夏には草花が躍動し、秋にはグラス植物が光に透けて揺れる……。そのどれもが、また違った“童話”のページを見せてくれそうです。

今回はバラやナチュラルガーデンが印象的でしたが、園内には他にもたくさんのエリアがあり、まだまだ見きれていない場所も多くあります。
次回はぜひ、もっと時間をかけて、季節ごとの表情をゆっくり味わってみたいと思います。
また、ガーデナーさんの話や、庭づくりの工夫、植栽の選び方などを実際に聞ける機会も多く、ただ見るだけの庭ではなく、「学べる庭」としての魅力もたっぷり。
植物が好きな人はもちろん、これから庭づくりを始めたい人にとっても、深いインスピレーションを与えてくれる場所だと感じました。言葉で形にするなら、「絵本をめくるような散策」
帰り道に不思議な出来事が起きたことも含めて、心に深く記憶に残る一日となりました。

アクセス情報(「中之条ガーデンズ」公式情報より)

- 住所:群馬県吾妻郡中之条町折田2411
- 車でのアクセス:関越自動車道の渋川伊香保ICから約50分ほど。
- 公共交通機関でのアクセス:
・JR吾妻線・中之条駅からタクシーでおよそ10〜15分程度
・園の案内には「駅からはタクシー利用を推奨」との記載もあります。
到着手段は車が最も便利ですが、公共交通を利用するなら事前に時刻表や運行情報を調べておくのが安心です。
参考サイトgardenstory.jp+1




