2025年6月23日。ガーデンフォトのイベントで、富士山の麓、標高1,040メートルに位置する山中湖を訪れました。
関東平野部よりも季節の歩みがひと月ほどゆっくりな山中湖。
塚原さんご夫妻のお庭に足を踏み入れた瞬間、「……ここは、楽園?」
春の名残を感じさせる景色に思わずため息がこぼれます。
やさしく迎えてくれたのは、澄んだ空気とともに揺れる花々、そして塚原さんご夫妻です。
ご挨拶を聞いていると、おふたりで力を合わせて庭づくりをしてきた様子が伝わってきます。

庭の至るところには、石像やパーゴラ、アーチなどが程よいバランスで配置されていて、空間にリズムを与えています。
ブルーやホワイトのクレマチスが、石のモニュメントをそっと囲むように咲き、そのたたずまいをより引き立てていました。
どの方向を切り取っても、自然と視線が集まる“主役”が生まれるのです。
華やかなバラのあいだには、ジキタリスやアチスルベといった背の高い植物がすっと立ち上がり、風景に美しい高低差を生み出していました。
視線を移すたびに新たな発見があり、どのエリアも見飽きることがありません。
気づけば、庭の奥へ奥へと吸い込まれていくような感覚に包まれていました。
どの場所にも余白があり、庭全体が“呼吸”しているようです。
塚原さんのブログには、こんな言葉が綴られています。
庭一面に咲き乱れ 『どこの庭にも見たことがない』『管理が大変でしょう』などと声をかけていただきます そうでしょう それこそ望むところです
草やバラを管理するとは考えていないのです 自由自在に生きる 自らが持つ美を少しでも多く少しでも高く現す手伝いをしていると思っているからやってられます
そこから草やバラたちとの会話が始まるんです
(2025年6月26日 塚原さんのブログより)
植物を「管理する」のではなく、「のびのびと息づかせる」ことを大切にしているからこそ、あの自由でいきいきとした風景が生まれているのだと深く納得しました。

夢中になって庭の至る所で撮影していると、雨粒が落ちてきました。ほどなく空が暗くなり、急な夕立のような雨に。
慌ててカメラをタオルで包みながら、足早に近くのガゼボへ向かいました。
ご厚意で雨宿りさせていただき、屋根を打つ雨音に耳を澄ませながら、しばしの静寂を楽しみます。

やがて、雲が切れて光が差し込んできた瞬間、緑の葉は雨粒をまとってきらめいて、物語のワンシーンのようでした。

冬の寒さも長く、春の訪れも遅い山中湖。
植物にとっては厳しさも伴う環境ですが、健やかに育つ姿を見て、ご夫妻の工夫と愛情が込められていることが伝わってきます。
胸の奥に残ったのは、植物の美しさだけではなく、ゆったりと流れる時間と、ご夫妻の思いが重なり合って生まれる空気感。
塚原さんが「またお越しくださいね」と手を振ってくださったときには、名残惜しさが込み上げて思わず涙が出そうになりました。
幸せな気持ちで過ごしたひとときに、心より感謝申し上げます。
そして、これからもどうかおふたり仲良く、いつまでもお元気でお過ごしください。

塚原さんのブログ 花のある暮らし https://mfgarden.exblog.jp/

